自転車にクルマ用HID(ディスチャージ)ランプを取り付けてみました
自転車にクルマ用HID(ディスチャージ)ランプを取り付けてみました。
夜に街灯がほとんどない真っ暗なところを自転車で走る機会があるのですが、 自転車に付属しているライトではあまりにも暗すぎて、道の状況がわからないため、 クルマ用のHIDライトを設置してみることにしました。その体験談をご紹介します。
先に結論を申し上げますと、大正解でした!おすすめです!
この自転車(ブリヂストンのROADMAN)にはでっかいカゴが2つもついていますが、買い物にも大活躍です。 牛乳パック50本くらいは運べるのでは!?車体の強度を超えちゃうかも!?
用意するもの(12Vのバッテリー編:前編)
ラジコン用7.2V直流バッテリー
クルマ用HIDの電源は、12Vの直流電源です。この電源をラジコン用7.2Vバッテリーを2本直列につないで(14.4V)作ります。
他のバッテリーはダメなの?
他に、12V直流電源の候補としては、クルマ用バッテリーや、バイク用バッテリーがありますが、 これらのバッテリーは、常に充電されていることを想定していて、深い放電に非常に弱いです。
そのため、自転車に搭載して、放電しきってからまた充電するという使い方ができません。一説によると、 そのような放電をすると2~3回でバッテリーがダメになるそうです。
さらに、重い、でかい、硫酸が危険、ということで、自動車用、バイク用バッテリーは使用しません。
次に単三のニッケル水素電池(パナソニック(サンヨー)のeneloopなど)というのも考えられます。
電池、充電器ともお手軽に手に入れることができる点はいいのですが
- 12V以上の電圧を得るために、10本~12本を直列にしなければいけないこと
- 1本の電池あたり想定されている電流は2A以下程度であること (それを大きく超えると内部抵抗で1Vの電圧も保てない。そこで2~4本ほど並列にしなければならない。)
- 1本の単三ニッケル水素電池の容量が大体2Whなので、そこから考えても50Wのランプを1時間点灯させようとするとおよそ20~30本必要となること
- 20本以上の充電池の充電に膨大な時間がかかってしまうこと
から、実用的ではありません。
他にLiFeバッテリーというものもありますが、これについては長所もたくさんあるのですが、なんか高そうです…(汗)
そういうわけで、深い放電を想定して作られていて、大電流を流せて、安くて、コンパクトな ラジコン用ニッケル水素バッテリーを使います。
点灯時間とコスト
ここでは、容量と価格のバランスに優れたニッケル水素バッテリーを選択しました。
2本直列につないだものを2セット用意しました(合計4本購入)。
- OPTION NO.1/パワーパック4000プレミアムNi-MH バッテリー (4000mAh)を2本
- マッスルパワー 3600 7.2V Ni-MH バッテリー(3600mAh)を2本
おおざっぱに計算しますと、それぞれ
7.2V×2×4000mAh=58Wh
7.2V×2×3600mAh=52Wh
だけの容量がありますので、フル充電すれば大体55WのHIDを、1時間ほど点灯させることができる計算です。
2セット用意したのは、各セットとも、ちゃんと使い切ってから充電したかったためです。1セットでは、毎回利用前に「放電→フル充電」してから使わざるを得なくなります。
ラジコン用バッテリーは大体数百回の充放電で寿命になるといわれています。 毎日充放電すると1年くらいで寿命になる計算です。
大体バッテリー2本で5000~6000円しますので(泣)、
300回充放電できるとして、バッテリー代としてHID(55W)を1時間点灯すると約20円かかることになります。
(充電の際の電気代は数円です。)
安いとは言えないですね…。バッテリーは高いです。以前計算したのですが、
300回しか充電できない電動自転車のバッテリー代は、125ccクラスのバイクのガソリン代より高かった(1km進むのにいくらかかるかという視点)です…。
早く数千回充電できるようになるといいです。
細かい話なのでここはとばしてくれて構わないのですが、このニッケル水素バッテリーは、大体100円超/Wh(容量あたりの価格)、 400円/kWh・回(1回の利用についてのエネルギーあたりの価格。電気代やガソリン代のおよそ10倍です…) ということになります。他のバッテリーと比較する際の参考にしてください。ちなみに、以前計算したところ ガソリンは1リットルで大体3kWhの(運動)エネルギーを取り出すことができます。
コネクター(直列にするためのもの)
上の写真は、2本のバッテリーを直列につなぐためのケーブルです(自作)。以下のもの用意します。
- ラジコン用バッテリーの標準となっているコネクター(オス×3,メス×1。 この写真にはオスは2つしか写っていませんが、HID側へつなげるためもう一つオスが必要になります。)
- ギボシ(100円ショップ等で売っているカー用品)
- 導線(5Aの電流を十分に通電させるだけの太さをもったもの)
上記の物を用意して、写真のような自家製のコネクターを作ります。
これを2本のバッテリーにつなぐと、
1本のバッテリーのマイナスともう1本のバッテリーのプラスをつなぐことに相当し、
直列になります。14.4Vの直流バッテリーの完成です。
ちなみにラジコンの世界では10A~20Aの電流を流すのは通常のことなので
(7.2Vにすぎない電圧で100Wものモーターを駆動させたりします!)、
ラジコン用のケーブル、コネクターは太くできています。
この部分の意味がよくわからない人は決してまねしないでください!
例えば、2本のバッテリーのうち1本のプラスともう1本のマイナス、1本のマイナスともう1本のプラスと
接続すると、バッテリーがショートして非常に危険です!
あっという間に爆発や炎上をして大けがをする危険があります。
安全のため、ヒューズ(10A程度)を挟むことをおすすめします。
ニッケル水素7.2Vバッテリー用充電器
上の写真はニッケル水素バッテリーの充電器です。7.2V前後のものへの充電を想定しています。充電は1本ずつ行います。
もっと安くてコンパクトな充電器でもいいのですが、あんまり安くて充電電流の低いもの(例:200mAなど)は充電に時間がかかります。
例えば15時間以上かかったりします。それでもいい場合は充電電流の大きいものを買う必要はありません。
通常は充電電流は1A超くらいあるといいのではないでしょうか。
7.2Vバッテリー用放電器
上の写真はバッテリーの放電器です。
浅い放電のあと、充電すると容量が減ってしまうので、これを使ってちゃんと放電をします。
毎回使用する必要はないようです。数回に1回使用します。
放電中にランプが点滅します。ランプの点滅が弱くなってきたら、バッテリーの電圧が下がっているということなので、
すぐに外します。放電しすぎるとバッテリーを傷めます。
こちらも7.2V前後のものの放電を想定しています。 以前ボケボケしていて、2本直列(約14V)のまま放電してしまい、放電器がものすごく熱くなって、変なにおいを発していました!(汗)
追記(2013年12月11日)
放電・充電の管理をしやすくするために、新しい充電器を買って利用することにしました。
「放電→充電」ができ、充電した電流時間(電気量のこと、単位はmAh)が測れるため、非常に重宝しています。
用意するもの(12Vのバッテリー編:後編)
エネループ10本直列に挑戦
不覚にも、数ヶ月間、使わないにもかかわらず充電せずに放置しておいた結果、およそ100回くらい利用した段階で充電できる電気量が極端に減ってきて、ついに寿命となってしまいました。
充電を終了させる、デルタピーク検出値の値を大きく設定したり、0.1A程度でゆっくり充電しても、もはやどうしようもありませんでした。
6000円で100回程度しか利用できないとすると、1回(およそ50Wh(50Wを1時間点灯))あたり60円!
『これはたまらん!コスト高すぎ!』ということで(充電せずに放置した私が悪いのですが)、ついに、禁断の
エネループ10本直列
を試してみることにしました!
使用したエネループ(ニッケル水素充電式電池、Ni-MH)は
単三型、min:1900mAh、1.2V、2000回充電可能
というものです。
エネループ利用の長所は、バランス充電ができること(ちがう言い方をすれば、「1本の不調で他のものまで利用できなくなる」ということがないこと)と、可能充電回数が圧倒的に多いことです。
短所は、『1本に流せる電流が小さい → 必要な本数が多くなる → 充電に時間がかかる』ということです。
写真では、あまり考えずに、プラス(赤)とマイナス(青)を物理的に接続できるように作成してしまいましたが、決してプラスとマイナスを接続しないでください。とんでもないことになります。
このエネループを10本直列にして(12V-2Ah、重さ300g)、さらに5セットを並列に接続します(12V-10Ah、重さ1.5kg)。
電圧計で測ると、大体14V出ています。フル充電後の、電流が流れていない状態での電圧です。
注意:エネループ10本直列のみ(12V-2Ah)では、流せる電流がせいぜい2A程度であるため(それを超える電流を流そうとすると、内部抵抗等により極端に起電力が落ちてしまい、12Vバッテリーとして利用できなくなります)、 50Wで利用するためには、少なくとも2セットは並列にする必要があります。実際に、1セットでは、50WのHIDを点灯させることはできませんでした。
かかった費用は以下の通りです。
単三型エネループが50本:1本200円で合計1万円
16本同時に充電できる充電器:4000円
10本直列の電池ケース5コ:1800円
その他ケーブル、コネクター類:数百円
合計1万6000円
まだ実験段階ですが、うまく2000回利用できれば、1回(およそ100Wh(50Wを2時間点灯))あたりの費用が5円!
と圧倒的に安くあげることできます。
毎日使っても6年使えますね。
パナソニックによれば、長持ちさせたければ、「最後まで使い切らない(残量2~3割で充電する)」、「過充電しない(8~9割の充電でやめる)」ことだそうです。メモリー現象をなくすためのリフレッシュ充電もほどほどにということですね。
いずれにしても、ニッケル水素充電池は、長期間使わないときは、ちゃんと充電しておきましょう…
用意するもの(光源編:HIDプロジェクターフォグランプ)
12V-55WのHIDプロジェクターフォグ
これが55Wのクルマ用HIDランプ(遮光板付き)です。 対向車や人を幻惑させてはならないので、必ず遮光板付き(カットラインパネル付き)のものを用意してください。
上に光が行ってしまうものを使用してはいけません。
ご経験をお持ちだと思いますが、上に光が行くようなランプは、たとえ1WにすぎないLEDランプでさえ、
対面する人はまぶしく感じます。
上に光が行ってしまっては、路面を照らさないので自分もいいことなし、周りもまぶしくていいことなし、です。
最近、懐中電灯式HID-2800lm(ルーメン)などというのを見かけましたが(2万円くらいするみたいです)、 配光特性が全然ダメでした(上の良くない配光でした。)。 こんなの実際に自転車につけたら大迷惑ですし、違法かもしれません。 昔HIDライトが出始めのころ、このような配光特性の自動車用HIDライトが売られていましたが、 公道使用厳禁、道路運送車両法保安基準不適合と なっていました。さすがにもう見かけないですが。
「自転車 HID」で画像検索してみて驚いたのですが、このような配光特性のHIDライトが公に売られていて、 使用している人が多くいるようです。 このような配光特性のHIDライトを公道で使用するのは止めましょう。 どうせ製品として作るなら、もっと配光特性を考えて作ればいいのに…と思います。
写真のようなランプが2つ入っています。今回はひとつだけ使います。
ご覧のように照射角度の調整もできます。
写真の下部の2つの端子に、先ほど作った14.4Vバッテリーをつなげると点灯します。
こちら側も、ラジコン用のコネクターを取り付けておき、バッテリー側コネクターと、バラスト側コネクターをつなげて
点灯させることになります。
設置
自転車のカゴとそのステイの間に、金属板を挟んでHIDのステイとします。
構造上、自転車が段差を越えたときなどに
振動が発生するので、バーナーの耐久性上、あまり良くないかもしれません。いまのところ大丈夫ですが、
改良の余地ありです。
ちなみに、「バイクは自動車より振動が激しいので、バーナーに強い耐久性が求められる」と
いわれていますが、私がバイクで利用しているヤフーオークションで買った安物バーナーでも、5年、2万km経ても何も起きていません。
100円ショップで買った筆箱を結束バンドで自転車に固定して、 バッテリーを入れておく袋とバラストを入れる袋を作ります。 ビニール製にしておくと、とりあえずの防水も期待できます。 ただし、雨の中で使用するのは止めた方がいいでしょう。
照射!
実際の照射写真です。色温度が6000Kのものを買いました。 この色が最も人間の目に合っている気がします。太陽光と同じなので、 人間の視覚センサーがもっとも敏感に受信できるので。
しっかり遮光されていて、上に光が行っていません。
自動車のヘッドライト用プロジェクター式HID(例えばHONDAアコードのものなど)では、 さらに明確な遮光ができますが、防水、角度調整の点で 難点があったため、利用できていません。
角度調整できます。
防水もばっちりだそうです。
使ってみての感想
明るい!
まず何より明るいです。クルマと同じくらい明るいです。真っ暗な道でも、十分路面の状況がわかります。
最近、節電からなのか、本当に暗い道がありますが、これなら大丈夫です。
明るいですが、遮光がちゃんとされているため、歩行者の足だけ見えるような感じになります。
ちょっと細かい話になりますが、見た目の感じだと、大体実質3000lm(ルーメン)
くらいだと思います。自動車用の35WのHIDヘッドライト1灯と同程度です。55Wの消費電力で3000lmというのは
HIDとしてはちょっと効率良くないですね。バラストないしバーナーの性能なのか、反射板の反射方向・効率のせいか…
1Wあたり100lmいけばいいのですが。私の感覚では、インバーター式蛍光灯は
これを少し超え、HIDはこれくらい、LEDはちょっとこれを下回るという感じです。
点灯時間
フル充電で1セットにつき大体1時間くらい点灯しています。これは計算通りですね。電源が切れる間際に点滅し始めて、 数分で全く点灯しなくなります。
安全!クルマが止まってくれる!
ここが一番重要なのですが、なんといっても安全になりました。
見通しの悪い交差点を出てくるクルマ、駐車場から歩道を横断して道路に出るクルマが、 必ず止まってくれるようになりました。
直接クルマから見えないところを自転車で走っていても、ドライバーが路面に映る光から存在を察してくれるようになりました。
大体10m先まで照らすようにライトを設定してあります。
自転車の安全運転のすすめ
健康増進のためにも、環境保全のためにも推奨されるべき自転車が、危険なものとして周りから嫌われることのないように願っています。
使用から3年経過してみて
2015年で、使用してだいたい3年になります。現在も利用しています。
まず、ラジコンのバッテリーは使用しなくなりました。パナソニックの充電式単三電池の使い勝手が良いので、そちらを使用しています。同時にたくさん充電できる充電器を持っていることが大きいです。
次に、「55WのHIDのくせにどうも暗いなー」と感じる原因がわかりました。
まず症状としては…、5000ルーメン程度を期待するのに、2500ルーメン程度に感じます(ちなみに自転車用LEDは200ルーメンがせいぜいでしょうから、暗いと言っても自転車用よりは10倍は明るいです。照射角度(いわゆる「立体角」)が(上下ではなく)左右に10倍に広がっている感じです。)
期待より暗くなってしまう原因は、リフレクター板の反射率が悪いことでした。分解して確認してみて驚きました。ほとんどメッキがかかっていません!
これは、安物プロジェクターランプを使ったことが悪いのです。
後日、バイク用のベーツライトという物を見つけました(ヤフーオークションなどに大量に出品されています。)。 これは、バイクのヘッドライト用のライトなので、しっかりとリフレクター板も作られていますし、 配光もちゃんとしています(当然、上で述べた「良くない配光」ではありません。)。さらに、H4タイプのものを選べば、ハイビーム・ロービームの使い分けもできます。
時間に余裕ができたときに、最近はやりの12V-20Wクラスのヘッドライト用LEDを使って、ヘッドライトを作ってみたいと思います。実は、バイクのフォグランプとして、すでに作ったことがあるのですが…、快調です。これなら消費電力も半分になるため、持ち歩く充電池も半分で済みますね。